自衛官の待遇改善への一つの取り組み   ー矢野 幸一(やの ゆきかず):28期ー

「人生は白駒の隙を過ぐるが如し」と荘子の中で記されているように、月日の経つのは白馬が通り過ぎるのを隙間から一瞬見るかの様であります。 自衛隊を定年退職して早十年、二度目の定年延長をした損害保険会社も来春で終焉を迎えようとしております。

現役時代とは全く違う職場環境の中で仕事に順応し、ここまで何とか信頼を得てやってこられたのは、偏に自衛隊と言う組織が人を育てる組織であり、とりわけ航空学生の教育が「負けじ魂」の基礎をしっかりと育んでくれた賜物と心から感謝しております。

損保に再就職してようやく慣れてきた頃だったでしょうか、以前同じ職場で勤務したご縁で、親しくお付き合いさせてもらっている後輩(43期生)から、「先輩、私の知り合いで自衛隊員の待遇改善のために頑張っている民間人のグループがあります。もし宜しければ協力してあげていただけないでしょうか?」という相談がありました。 お世話になった自衛隊に何か御恩返しをしたい、何か自分でもできることはないだろうか?と思っていたタイミングだったので、この協力団体の門を叩きました。

▽ 自衛官守る会(政治に参加できない自衛官を国民の声で守ろう会)

政治に参加できない、自衛官に代わって「大変な任務に身の危険を顧みず全身全霊で邁進する自衛官が、任務を終え、つかの間の休養の時間くらいはお父さんとして、お母さんとして、恋人や夫として…楽しい家庭を持てるように国にお願いしよう…」と思ったことがきっかけで、国防ジャーナリストの小笠原理恵さんが発起人となられ立ち上げられたグループです。

主な活動目的は、

(1) 自衛官が安心して任務に就ける住環境を整備して欲しい。

(2) 急な転勤に際して民間住宅が基地 周辺にない自衛官のために、官舎を 基地の近くに作ってほしい。

(3) その他、自衛官がその仕事に誇りを持ち、家族と共に退官まで仕事を続ける事が出来るような対策を国と して考えてほしい。ということを切り口に署名を集め、国会議員に動いて頂くことであります。

実は、私自身現役時代厚木基地に勤務し、米軍とのあまりの待遇の格差に疑問を持ち、羨ましくも思っていました。

86RIMPACに参加しアメリカ西海岸やハワイの基地で体験した事や海幕勤務で東海岸のノーフォークやハワイの基地に渡航した米国出張において、決定的な違いを肌で感ずるに至りました。一番強く思ったのは、米国国民は自分達を、命を懸けて守ってくれる軍人に対し心から敬愛の念を抱いている事、国の施策によって軍人の地位と名誉が守られ、特に厚生面で優遇され国民の多くも納得していることであります。 「こういう環境なら誇りを持てるし、やる気も湧いてくるだろうなあ~」自衛隊もかくありたい、あるべきだと心から思ったものでした。

質実剛健の自衛隊は美しいものでもありますが、「武士は食わねど高楊枝」である必要もないと思うのであります。

▽ 実 績

年間を通して活動の趣旨を説明しながら署名を集め、グループの役員が年に一度集計して紹介議員に手渡し、目に目える形で現状を訴え、住環境の整備、各種手当のアップや叙勲の枠組み拡大等をお願いしております。年間の署名数は約2500筆ですが、22万人余りいる大所帯である自衛隊、現役は参加できないにしてもOBやその家族、親戚や友人の数を推計すれば、此の2500筆という数字が多いのか少ないのかは一目瞭然であります。

現時点における紹介議員は衆参両院で40数名であります。2014年からの活動により、役員が中心となり紹介議員を初め防衛政務官や統合幕僚長、各幕僚長に面会し、現状の問題点や待遇の改善をお願いしてきました。その影響もあり、2018年までには「自衛官支援議連」も立ち上がり同年11月には新防衛大綱に「自衛隊員の待遇改善」が明記されたことは記憶に新しいところであります。

その後、「日用品購入のための補正予算の確保」や2020年6月以降「引っ越し費用の実費支給」が決定されました。しかしながら、現状としてはまだまだ「絵に描いた餅」の域を脱しておらず、少しずつ要望事項を現実のものにしていく必要があります。

例を挙げると以下のとおりです。

(1) 叙勲の枠を他省庁並みもしくはそれ 以上を確保(警察や消防と比較して現状はどうなのか?)

(2) 各種手当の拡充(当直手当、機長手当)更には俸給自体の抜本的な見直し等

▽ 結 論

自衛官OBのひとりとして、これらの趣旨にご賛同いただけるならば、個人としての署名にご協力頂ければ幸いです。

現実問題として、自衛隊OBとしてこの署名活動に積極的に関わっていただいている方は少ないため、署名筆数もこの程度にとどまっているものと考えます。個人情報保護法の普及によりなかなか署名を集めにくい環境の中、より多くの署名により紹介議員を増やしていくことは、我が国を取り巻く安全保障上の観点から、自衛隊の活動がいかに大切なことであるのか、そして、その組織を支える個々の隊員がどのような意気込みで臨んでいるのかを国民の多くの方に正しく理解してもらえるばかりでなく、現役自衛官の待遇改善のみにとどまらず、苦境にあえぐ募集状況にも一条の光が差し込んでいくものと思料します。

なお、航空学生出身の自衛官OBからの署名数をアピールするために、僭越ながら当面の間、私が窓口になり皆様の声を「自衛官守る会」にお届け致しますので、用紙と送付先は航翔会ホームページからダウンロードをお願いします。

   名   前  住 所(都道府県から)

 

(お問い合わせ先):矢野 幸一:メールアドレス:polo777jpjp@yahoo.co.jp